私の考える調律とは?

 
 
演奏会などの後で「今日のピアノは良い音だったね」とか、逆に「ヒドイ音だった」等、そんな会話を耳にする事があります。

結果としてそう聴こえたのですから間違いではありませんが、何故そう言う音色に聴こえたのでしょうか?

ピアノの音色を決定する要因がいくつかあります。

  1. もともとそのピアノが持っている音

  2. ホールの響き

  3. ピアニストのタッチ

  4. 調律師の作る音

これらが合わさって音色が作られます。

1と2は変えようがありません。

1のそのピアノの持っている音色が本当にヒドイ場合を除けば、3,4でほとんど音色が決まると言っても良いくらいです。

 
ヒドイ状態のピアノからでも、綺麗な音を出せる素晴らしいタッチを持っているピアニストもいらっしゃいますし、本来は綺麗な音が出るハズなのにそれが発揮出来ない

タッチのピアニストも、残念ながら

いらっしゃるのは確かです。

同じ様に、素晴らしい音を出せる能力を持っているピアノでも、調律が悪ければその能力は発揮出来ませんし、また逆もありです。

例えて言うなら、F1等のレースの現場のイメージです。

  1. ピアノ=車

  2. ホール=サーキット

  3. ピアニスト=ドライバー

  4. 調律師=メカニック

 
300km出せる車を300km出るようにメンテナンスしてドライバーが300kmでドライブをする。

そのピアノの持っている能力を100%発揮出来るように調律して、ピアニストがそれを生かして音楽を作る。

当たり前の事ですが、それが基本です。

しかし、その基本的な事がなかなか出来ない事が多いのです。

調律師は演奏中は何も出来ません。本番が始まるまでが全てです。

ピアニストが安心して演奏に集中出来る事が、そのまま良い演奏に繋がります。

演奏を邪魔するような、余計なストレスを与えない状態、更に気持ちよく弾いて頂ける事が出来れば、良い仕事が出来たと言う事になります。

家庭のピアノでも基本的には同じです。たとえアップライトピアノでもやっている事には変わりはありません。

ですからもし貴方のお宅にお伺いしたとしても、プロのピアニストが弾くピアノとやる事は同じと言うことです。

正確な平均律、バランスの取れたオクターヴ、伸びのある倍音をたっぷりと含んだ音色。

平均律は響かない(ハモらない)と思っておられる方が結構いらっしゃいます。しかし、事ピアノに関しては、響きのある音色をしっかりと作ってあげれば気持ちよくハモ

ります。

そう言う響きであれば、ホールなどで離れて聴いてもしっかりと届きます。安心してピアニッシモで弾くことが出来ると言う事です。

調律師が100人いれば、音色も考え方も100通りあります。

どれが正しいとは言えません。

その判断が下せるのはピアニストだけなのです。

要は弾く方が満足して頂ければ良い訳ですが、もちろんプロの満足と初心者の満足では意味合いが全然違います。

 
しかし、初心者だからと言ってセーブした仕事をしていては、必ず自分に返って来てしまうものです。どんな場合でも自分自身で納得の行く仕事をする事。なかなか難

しい事ですし、自己満足と言われ

ればそれまでですが、私個人としては、その様に考えて調律と言う仕事をさせて頂いています。